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2016.1.4(月) イベントレポート
【イベントレポート】11/10・12/10『これから働きたいママのためのプレおしごと講座』~個人事業主登録・起業手続き勉強会~

フォロー講座当日の様子

「ものづくりコース」、「お教室サロンコース」、「クラウドソーシングコース」と開催してまいりました『これから働きたいママのためのプレおしごと講座』。今回は、受講者のかたのフォローアップとして、開業に際して必要な手続きに関する講座を開催いたしました。
講師としてお招きしたのは、行政書士の北川哲也さんです。

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講師プロフィール 北川哲也さん

北川さん顔写真

兵庫県生まれ。茅ヶ崎には約30年在住。大手小売会社に勤務したのち、2011年より「行政書士北川哲也法務事務所」を開業。主に申請手続きの代理・コンサルティングを行う。
特定非営利活動法人NPOサポートちがさきなど複数の団体の役員も兼務。

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目次の流れに沿って、勉強会の内容を対談形式でご紹介させていただきます。

【目次】
趣味と事業の違い~開業届けを出す意味について~
開業手続きの流れ
【1】開業届
【2】確定申告と青色申告
- 所得税の計算方法
- 確定申告と青色申告
- 扶養の範囲内とは
【3】知っておくべき法律と許認可

「難しそう」という印象を持っている人もいるかもしれませんが、一度理解してしまえばさほど難しいことはありません。ぜひ気軽に読み進めていただければと思います。

 

趣味と事業の違い~開業届を出す意味について~

―では、まず事業をはじめる際に必要になる「開業届」について教えてください。

北川:開業届は、事業収入を得ていくなら原則として必ず出さなければならない届出です。

開業届を出す意味

―「事業収入を得る」とは、どういうことでしょう?趣味でやったことに対してお金をいただくこととの線引きが難しいですね。

北川:最高裁判所の定義によれば、事業所得とは、
「自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意志と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいう」
とされています。

―難しい言葉が並んでいますが、単発のお手伝いでお金をもらうようなケースは「事業収入を得ること」には含まれないようですね。

北川:そうですね。そのような場合は「反覆継続して」という部分に当てはまりません。少し曖昧な面がありますが、自分で「このような事業形態で継続してやっていこう」という気持ちがあれば、そこがスタートになるでしょう。

―開業届を出すタイミングは自分の気持ちで決めていいということですね。例えば、お友達を相手に自分のサービスを試してみて、「これを事業にしよう」と思えるようになってから開業届を出すというのもよさそうです。

―では次に、開業にあたっての必要な手続きについて具体的に教えていただきたいと思います。

 

開業手続きの流れ 【1】開業届

開業届画像

―こちらが、実際に提出する開業届(個人事業主開廃業等届出書)の書面ですが、想像していたより簡素な印象を受けます。

北川:はい、あくまで申告ですから、これ1枚出せば大丈夫なんです。各項目は難しいように感じるかもしれませんが、何も書かずに印鑑だけ持って税務署に行っても、きちんと書き方を教えてもらえますので問題はありません。
ただ「屋号」は看板名に当たるものなので、きちんと考えたほうがいいでしょう。私で言えば屋号は「行政書士北川哲也法務事務所」ですね。開業届を出せば、“屋号で銀行口座が作れる”というメリットもあります。

―ネットショップなどを開設する場合も、きちんと開業届を出して屋号の銀行口座を用意したほうが、買う側も安心ですね。

北川:そうですね。一方で、開業届を出せば原則として確定申告が必要になります。慣れていないと少し大変なため、デメリットに感じる人もいるかもしれません。しかし、面倒でも手続きや確定申告をしておけば、控除を受けることができて税金を減らすこともできます。元々確定申告は国民のための制度なので、ぜひ前向きに取り組んでいただければと思います。

 

開業手続きの流れ 【2】確定申告と青色申告

―次は確定申告と青色申告について教えてください。そもそも確定申告とは何ですか?

北川:確定申告とは、1年間に生じた所得の合計金額とそれに対する所得税の額を計算し、税金を納めるための手続きのことです。

 

所得税の計算方法

―所得税といえば「収入が多いほど税金も多い」という漠然としたイメージはありますが…

北川:そうですよね。ではまずは所得税の計算について具体的に見ていきましょう。下の計算式でいえば、ピンクの「所得税」と書いてある部分が、私たちが負担すべき税額です。所得税は、事業所得から所得控除を引いた額に、税率をかけて求めます。そして、事業所得というのは、事業収入から必要経費を引いて求めるのです。

所得税の仕組み

「事業所得」「事業収入」と言われてもピンとこないかもしれませんので、具体例をあげてみます。
例えば、アクセサリーを作って1万円で売れたとしましょう。この1万円が「事業収入」です。でも、作るためには原材料費などの必要経費がかかりますよね。これを5,000円だとすれば、下記の計算になり、事業所得は5,000円です。

10,000円(事業収入)-5,000円(必要経費)=5,000円(事業所得)

個人事業主で経費を気にする人が多いのは、所得の計算に関わってくるからなんですね。所得税の税率は所得金額に応じて変わりますが、仮に10%だとします。事業所得が5,000円なら所得税は500円(5,000円×10%)。でも経費を引かずに10,000円のまま申告してしまえば、1,000円(10,000円×10%)です。このケースでは倍も変わってしまうんですね。

―事業所得から「所得控除」を引いた額に税率をかけて計算するということですが、所得控除はとても種類が多いですね。一覧化したものが下記の表です。

所得税の控除の種類

北川:この表の項目・内容を全て覚える必要はありません。ただ、自分にどんな控除が適用されるかは把握しておきましょう。間違いなく皆さんが関係するのは、適用条件がない「基礎控除」の38万円です。

―事業所得が38万円以下であれば、基礎控除の範囲内なので所得税がかからない、ということですね。最初は年間38万円を超えるのも難しいケースが多いかもしれません。

北川:特に1年目には、所得を出すこと自体ハードルが高いですからね。でも、38万円を超えた場合は確定申告が“義務”となります。そして、納税が必要なのにも関わらずしなければ「脱税」になってしまいます。

所得税の仕組み事業収入のみの場合

―脱税!違法行為をしてしまわないためにも、38万円という数字はしっかり頭に入れておかなければなりませんね。

―パートと同時並行して個人事業を行っていきたいという人もいるかと思います。その場合の所得税の計算方法はどうなるのでしょうか。

給与所得がある場合の所得税の計算方法

北川:さきほど、事業所得の計算をする際には事業収入から必要経費を引く、というお話をしたかと思います。でも、パートやアルバイトなどの給与所得は少し考え方が異なるんです。実際にパートで働いているときに、何かどこまで経費になるかを計算するのは現実的に難しいですよね。ですから、はじめから経費の代わりとして「給与所得控除」というものがあり、給与収入から65万円差し引かれることになっています。そのうえで所得控除を差し引き、税率をかけて所得税を算出するのです。
事業所得と給与所得が両方ある場合は、上記の一番下の計算式のように、合算して損益通算することができます。事業所得がマイナスならその分税金は減るというわけです。なかには税金が戻ってくるケースもあるでしょう。

 

確定申告と青色申告

確定申告と青色申告

北川:では、確定申告について詳しく解説していきましょう。
確定申告というのは、1年間の所得から所得税を算出し税金を納めるための手続きです。毎年2月中旬から3月15日頃までに申告をすると決められています。
先ほど言っていた通り、基本的には所得が38万円を超える場合に申告が必要です。ただし、給与所得者の場合は、所得が20万円を超えたら申告しなくてはいけません。

―パートやアルバイトをしながら事業をする方もいらっしゃるかと思います。そういう方は20万円を超えたら申告が必要ということですね。

北川:はい。そして、確定申告には白色申告と青色申告の2種類があります。青色申告にはさまざまな優遇措置がありますから、ぜひ青色申告の承認申請をすることをオススメします。

―白色申告と青色申告の違いを表にまとめましたのでご覧ください。

青色申告と白色申告

北川:白色申告は「青色申告ではない」というだけなので、特に注目していただきたいのは青色申告です。青色申告のなかでも、記帳方式が簡易簿記なら最大10万円の控除、複式簿記なら65万円の控除、というように2種類に分かれています。
複式簿記(65万円の控除)のほうが控除額が多い反面、作成する書類の量なども多いです。しかし、会計ソフトを使用すれば自動で書類を作成してくれますから、複式簿記を選択しても問題なく申告できるでしょう。事業を始めたばかりであれば、税理士さんに依頼しなくても自分でできると思います。

―最近は「freee」のようなWeb上で無料から始められるクラウド会計ソフトもありますね。

北川:はい。そのほか、家電量販店などでもパソコンにインストールするタイプの会計ソフトを購入できます。数千円かかっても、控除額で必ず元が取れますから、導入したほうがいいのではないでしょうか。

―青色申告には赤字を繰り越せるというメリットもありますね。

北川:そうなんです。1年目から利益を出すことは難しいですが、2年目から黒字になる人は多い。そういった面から考えて赤字を3年繰り越せるというのは大きいですね。
例えば、開業1年目に設備などにお金がかかって赤字になったとします。でも、その翌年に黒字になったとしたら、前年の赤字分を使って計算上黒字を減らすことができるのです。その分税金が減る、というわけですね。

―なるほど。青色申告の方が税金の面でメリットが大きいということですね。
先ほど青色申告の方が控除額が大きいとおっしゃっていました。青色申告を選択した場合、どれくらいの所得まで税金がかからないのでしょうか?

青色申告の場合の控除額

北川:白色申告の場合は、基礎控除の38万円を超えると所得税がかかります。でも青色申告で複式簿記を選択すれば、事業所得が103万円以下なら、所得税がかからないということになりますね。

―年間103万円といえば、およそ月8万円。青色申告をしておけば、事業所得が月8万程度のうちは所得税がかからないということですね。年間38万円(月3.2万円)より多く稼ぎたいと思っているなら、是非青色申告をして103万円まで所得税を払わなくていい権利を持っておきたいですね。
そして青色申告をする場合には、開業届の提出が必須なんですよね。

北川:はい。新規に事業をおこす場合は、開業届を出すのと同時に「青色申告承認申請書」を提出しておくのがオススメです。こちらも、書き方がわからなくても税務署に行けば教えてもらえますから、印鑑だけ忘れずに持参しましょう。丸をつける場所については、下記を参考にしてください。
なお、すでに事業を始めている場合は、青色申告をしようと考えている年の3月15日までが承認申請の期限です。例えば2016年分から青色申告をしたいなら、2016年3月15日まで申請期限で、実際に確定申告をするのは2017年2月中旬から3月15日ごろまで、ということになります。

青色申告の申請書

扶養の範囲内とは

―「扶養から外れない範囲内で働きたい」という方も多いと思います。それに関しての条件はどうなりますか?

扶養の範囲で働く

北川:夫がメインで働いている場合、「妻の年間所得の合計金額が38万円以下」といった条件を満たせば、夫は「配偶者控除(控除額38万円)」を受けることができます。つまり夫の所得から38万円を差し引いて計算してもらえるため、夫の税金は減ります。
年間所得の合計金額は、事業所得から控除額を引いた金額なので、青色申告をしておけば、年間の事業所得が103万円以下であれば、夫は配偶者控除を受けることができます。

―少し補足させていただきますと、ここではあくまで税金に関する扶養(配偶者控除)に関してお話いただいています。
そのほかに、社会保険の扶養の適用要件である“130万円”というラインも存在します。もし事業所得が103万円を超えた場合には、次は130万円という金額を念頭に置いておいたほうがいいですね。社会保険の扶養の適用要件は健康保険組合で定められていますので、細かい条件は加入している健康保険組合に一度問い合わせておくと安心です。

北川:年間所得が130万円というと月10万円超ですから、そこまで所得が増えるのは大変喜ばしいことでもあります。扶養から外れるギリギリのラインに立つと悩まされると思いますが、前向きにとらえることが大切ですね。

 

開業手続きの流れ 【3】知っておくべき法律と許認可

―では、必要に応じて知っておかなければならない、許認可の手続きについても教えていただきましょう。サービス内容によっては、さまざまなルールが定められており、書類や届出が必要なこともあるんですよね?

北川:特に食品、美容、マッサージ関係のサービスを考えている人は注意が必要です。ただ、細かいルールを全て覚える必要はありません。相談先がどこなのかがわかっていれば問題なく手続きができますから、気楽に構えてくださいね。

食品関係の許認可

北川:まず、食品関係の相談先は保健所です。「食品関係」と一口に言っても、「調理する」「製造する」「販売する」などさまざまな業態がありますよね。業態や内容によって必要な許認可は異なります。
上記の下の表で紹介している例をみましょう。菓子や菓子パンを作って売るためには菓子製造許可が必要で、食品衛生責任者資格をもつ人をおく必要があります。それが調理パンや惣菜の場合であれば、菓子製造許可ではなく、飲食店営業許可が必要です。一方、菓子やパン、料理の作り方を教えるだけであれば、提供しているのは“スキル”なので、必要な許認可はありません。

―許認可が必要なくて手軽だということもあって “教室”という業態を選択する人が多いのかもしれませんね。

北川:そうですね。どういった業態であれば細かい許認可やルールにしばられずに事業を起こせるか、という観点から事業を考えるのもいいと思います。

美容関係の許認可

北川:次は美容関係です。こちらも相談先は保健所。衛生面が問題になってきますし、化粧品や薬用化粧品などに関わる事業は薬事法によってかなり厳しく取り締まられています。

―なるほど。表を見ると、最近流行りのまつげエクステも美容師資格が必要なんですね。

北川:はい、首から上に特化したサービスを行うためには、美容師資格が必要です。特に美容に関心がある人は、こういったルールがあることを知っておいたほうがいいでしょう。

マッサージリラグぜーション許認可

北川:最後に、マッサージやリラクゼーション関係のサービスですが、有資格者でないと行ってはいけない行為がある点に注意が必要です。
上記表の左側のあん摩や指圧、鍼灸などは治療を目的に行う医業類似行為で、国家資格が必要です。それに該当しない場合は、「治療」という言葉すら使ってはいけない決まりになっています。例えば、アロマテラピーや足つぼマッサージの広告を出し、「治療できます」という文言を書いた場合、法律違反になってしまいますので気をつけましょう。

―広告にも注意が必要なんですね。

―開業手続きや確定申告、許認可手続きなどの難しそうなお話をわかりやすく解説いただき、ありがとうございました。では、最後にメッセージをお願いします。

北川:手続きが障害になって事業をおこすことをためらっている人がいるとしたら、とてももったいないことだと思います。起業は「Try&Error」の連続です。わからないことがあっても、すぐに「調べる・聞く」という習慣を身につけて、手続きはすぐに終わらせてしまいましょう。自分から待っているだけではなく、とにかく実行あるのみ!ぜひ新たな一歩を踏み出していただきたいと思います。

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ご自身も個人事業主であり、幅広くご活躍されている北川さん。なかなか理解しづらい手続きのお話を、とてもわかりやすく丁寧に教えてくださいました。「自分もできるかも!」と思った人も多いのではないでしょうか。これから事業を始めるにあたって、ぜひ参考にしていただければ幸いです。