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2016.7.22(金) イベントレポート
【イベントレポート】16年7月12日『これから働きたいママのためのプレおしごと講座』~革小物作家編~

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7月12日に開催いたしました、『これから働きたいママのためのプレおしごと講座』。今回は、ものづくりコースの革小物作家編。講師としてお招きしたのは、「てしごと屋Happa」主宰の坂本麻衣さんです。

【講師プロフィール】
革小物作家 坂本麻衣さん
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「てしごと屋Happa」主宰。工房、イベント、個人宅等で出張ワークショップを開催。「エコモノ市」や「gigiマルシェ」等のイベントで作品販売も行う。私生活では高校2年生と小学5年生の姉妹の母。茅ヶ崎市在住。

ここでは、坂本さんのお話をダイジェストにしてご紹介します。

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【目次】

Ⅰ 開業までのプロセス
Ⅱ 開業後の広げ方(1):ワークショップ
Ⅲ 開業後の広げ方(2):工房オープン
Ⅳ 成功のポイント
Ⅴ 現在のワークスタイル
Ⅵ 働く上で大切にしていること

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開業までのプロセス

―まず、革小物作りを始めるようになったきっかけは何だったのでしょうか?

坂本:上の子が3歳の頃(2002年)ウクレレを習っていたのですが、ウクレレの先生がたまたま革職人でもあったんです。その流れで、革小物作りを教えていただくようになりました。

―「たまたま」の出会いから革小物作りが始まったんですね。
坂本さんは当時ブーケ制作のお仕事をされていましたが、第2子妊娠を機に退職。その後しばらくは幼稚園で役員を務めるなど、子育てに注力されています。飲食店のパートをする傍ら、2009年頃から革小物作家としての一歩をスタートされますが、開業に至るまでの経緯を次の4ステップに分けてお伺いしましょう。

始め方

【ステップ1】友人向けに展示会を行う

―はじめは、ご友人向けに自宅で展示会をされたそうですね?

坂本:はい。自分で作った革のバッグを持ち歩いていたら、友人たちが「私たちにも作ってくれない?」と声をかけてくれました。ぜひお好みの色を選んで欲しかったので、色違いの同じ型のバッグを5つ作り、自宅で展示することにしたんです。

―当時はどんなお気持ちでしたか?

坂本:それまでは自分自身や家族のために作るだけだったので、「買いたい」といってくれる人がいることが単純に嬉しくて、喜んで作ったのを覚えています。価格設定には随分悩みましたし、友人からお金をいただくことには緊張しましたが、快く買っていただけてほっとしました。小さなことかもしれませんが、この一歩を踏み出したことで、次へのアクションにつながったと思います。

 

【ステップ2】イベントの情報を収集する

―その後、作品を販売するイベントを探されたそうですね。イベントを選ぶ際は、何を重視して選べばいいのでしょうか?

坂本:私の場合は、特に次の点を考慮して選んでいます。
・イベントの雰囲気が自分の作風と合うか
・販売環境(駐車場の有無、子どもを連れていける環境か)
・出店料
当時は下の子が幼かったので、イベントにも連れていっていました。子どもの負担にならない環境かどうかは重要でしたね。

―PCで検索し、募集告知があるイベントのなかから選ぶというイメージでしょうか?

坂本:はい。基本的にはそうですね。過去のイベント写真等を見て、自分の作風と合っているかどうかを確認しています。ただ、慣れないうちは実際に足を運んで下見をしたほうが間違いないかと思います。
また、「エコモノ市」のように、募集告知がなくても自分からアプローチしたケースもありました。イベントの空気感がとても素敵だったので、「ぜひ出店させていただきたい」とメールを送ったんです。すぐには返信がなかったので一時は諦めていたのですが、忘れたころに「出店しませんか?」とご案内をいただきました。

―ここは!というイベントには、自分から積極的にアプローチすることも大切なんですね。

 

【ステップ3】出店準備をする

―イベントに出す作品のラインナップは、どのように決めるのでしょうか?

坂本:基本的には、年間の行事予定や季節感に合ったアイテムを作るようにしています。例えば、母の日の前であれば女性もののバッグ、父の日やバレンタインの前であれば、男性用の小物などですね。前倒しして作らなくてはいけないので、夏頃にクリスマス用のものを制作することもあります。

―商品以外には、どんな備品が必要ですか?

坂本:ディスプレイ用の備品や、搬入用の台車などですね。路面の状況によっては一般的な台車ではなく、アウトドア用のワゴンカート等を利用したほうが便利なこともあります。あとは、一番大事なのはおつり用のお金かもしれません。すぐに小銭を用意できるならいいのですが、近くにお店が見当たらないような立地のこともありますから。

―なるほど。せっかくご購入いただけそうなのに、おつりがなくて販売できなくなっては、もったいないですね。

 

【ステップ4】イベントに出店する

―準備が終わったらいよいよ出店ですが、実際に出店してみて何か気づきはありましたか?

坂本:イベントでの学びはたくさんありましたが、例えば、お金の管理方法はイベントによって違うんです。一番初めに出店したのは横浜を中心にイベントを開催している「にじいろmarket」でしたが、こちらは運営者側がすべての作家の商品をレジ管理してくれる「一括レジ式」。イベントによっては、ブースを借りて個別でレジ管理する場合もあります。
一括レジ式のイベントに参加することで、納品書や値札管理の方法等を学ぶことができました。現在、工房ではほかの作家さんの作品も委託販売しているのですが、基本は一括レジ式を採用しています。当時の経験が活かされていますね。

―イベントに出店することで、商品を販売する際の事務的なノウハウを学ぶことができるんですね。

 

開業後の広げ方(1):ワークショップ

―2011年には、革小物の作り方を教える事業も展開されています。ワークショップを始めたきっかけを教えてください。

坂本:「作品を買いたい」というご要望を多くいただくようになり、自宅で販売する機会が増えていきました。でも、子どももいましたし、見ず知らずの方を自宅に招くことには少し抵抗があります。そこで、フリースペースを借りられないか聞いてみたのですが、「販売目的の場合は貸せない」「ワークショップだったらOK」という回答でした。はじめは販売できないことに落ち込んだのですが、「ならばワークショップをやってみよう」と思いなおしたんです。

―そこで諦めずにワークショップを始めようと思えたところが素敵ですね。では、実際にワークショップを実施するまでの流れを伺っていきましょう。
広げ方①

 

【ステップ1】プログラムを設計する

―初めてのワークショップは、どんな内容にしたんですか?

坂本:比較的手軽に作れるので、全員でブレスレットを作るプログラムにしました。

―現在は、生徒さんが各自好きな作品を作り、作る作品によって値段が変わる、というプログラムにされているそうです。前回に引き続いて作品を作る場合は、一律500円なのだそうですね。

坂本:はい。当初は作るものを統一していましたが、当然生徒さんによって作りたいものが違いますよね。作りたいものを作れることで生徒さんも「次は何を作ろう?」「これを作りたい!」と、とても楽しみにしてくださるんです。
また、それぞれお財布事情も違います。余裕がある月はバッグを作りたいと思うかもしれませんし、余裕がなければ小物を作りたい、と思うかもしれません。そういった生徒さんのニーズを受け止めるために、フリースタイルに落ち着きました。
時間帯に関しても、10時~15時の間で目一杯いてくださってもいいですし、ご都合の良い時間だけ来ていただくのでもOK、としています。

―かなり自由度を上げて、生徒さんのニーズを優先されているんですね。教える側としては、時間帯や作品を統一するほうが簡単だと思いますが、ご苦労はありませんか?

坂本:そうですね、作品によってそれぞれ違う説明が必要になるため、どうしても生徒さんに「待ち」の時間が発生してしまいます。でも、皆さん「待っている間のおしゃべりも楽しい」とおっしゃってくださるので、ありがたいですね。初めて会う方同士で仲良くおしゃべりされているケースもよくあります。

 

【ステップ2】場所を決めて告知をする

―お教室運営において、集客は最も難しいポイントかと思いますが、坂本さんの場合は、少し特別なやり方をされていますね。

坂本さん:はい、私の場合には、参加したいという方が先にいらっしゃって、その方のご都合に合わせて開催するようにしています。例えば出張であれば、「3名以上集まれば伺います」ということにさせていただいていました。その際、場所も生徒さんにご用意いただくことが多かったです。現在は工房を構えたので、お客様からお問い合わせをいただき、予約を受けつけるというやり方に変えています。

―なるほど、通常は日にちも場所も先に決めて、告知をすることが多いですが、坂本さんの場合は、先に生徒さんが決まっていて、そのあとで日程や場所を決めているのですね。まずおひとり「是非習いたい!」という方を見つけ、その方に他の参加者や場所のご用意をお願いする。先に場所代などが固定されてしまう通常のやり方と比較すると、リスクが低いですね。

 

【ステップ3】道具や材料をそろえる

―初めてワークショップを開催したとき、道具や材料はどうされたんですか?

坂本:最初に革小物作りを習った際に、小物を作るための道具は最低限そろえたので、それらを使いました。材料となる革に関して、はセール時期にまとめて購入し、なるべく安く用意しましたね。家計には手を付けず、やれる範囲でやるようにしていました。収益が上がったら、そのお金で少しずつ道具を買い足していきました。

―最低限の道具だけでも、工夫すればワークショップができるのですね。いきなり多額の投資をするのではなく、出来る範囲で少しずつ充実させていく、という方法もあります。

 

【ステップ4】ワークショップを開催する

―初回は5~6名の方にワンコインでワークショップを開催されたそうです。生徒さんの反応はいかがでしたか?

坂本:はじめは単発開催のつもりでしたが、生徒さんから「次はいつやるの?」と聞かれ、継続開催するようになりました。だんだんと口コミで生徒さんが増えていくにつれて、私自身も「革小物を仕事にしたい」という思いが強まりました。その頃から、イベント出店の営業を積極的にしたり、出張をはじめたり、仕事の幅を広げていくようになったんです。
その後、革小物のお仕事が増えてスケジュールが埋まるようになったこともあり、パートは辞めました。「革小物一本で行く」と決断するまでには葛藤がありましたが、コツコツと続けていくうちに、生徒さんも増えて、気が付くと、もうパートを辞めざるを得ない状況になっていました。

―生徒さんのニーズに合わせて身を任せていった結果、今があるということですね。

 

開業後の広げ方(2):工房オープン
広げ方②


―坂本さんは、2016年6月1日にご自身の工房「てしごと屋Happa」をオープンされたばかり。お教室のほか、作品の展示販売も行っています。コツコツ地道に事業を行ってこられた坂本さんですが、思い切って工房オープンに踏み切ったのはなぜでしょうか?

坂本:これまで資材は自宅保管でしたが、やはり業務量が増えて資材が増えると、スペースを取ってしまい、家族に負担をかけてしまいます。そのため、頭の片隅で「可能であればどこかを借りたい」とずっと考えていたんです。
家賃面で折り合いがつく場所はなかなか見つかりませんでしたが、仕事でよく利用するレンタルスペースの貸主さんが、隣の店舗の大家さんでもありました。その店舗が空きスペースになっていたので、「ここはいくらですか?」とお伺いしたのがきっかけです。本来は私自身の名義で借りるのは相当難しいはずなのに、大家さんは快く貸してくださるとのこと。そんな機会はもう訪れないと思い、踏み切りました。

―大家さんとの信頼関係があってこその、物件との出会いですね。いい店舗との出会いは突然ですから、普段から「店舗を借りるならこうしたい」というイメージを持っておくことも大切だと思います。
事業を続けていくなかで、コツコツ積み上げることも大切ですが、思い切ってチャレンジするようなフェーズも必ず訪れるかと思います。坂本さんは今がまさにその時期ですね。
現在は工房を立ち上げたばかりでかなりご多忙とのことですが、ご家族の反応はいかがでしょうか?

坂本:娘たちは、小さい頃からずっと応援してくれています。とても心強く、ありがたいですね。主人も積極的に家事をしてくれるので、助かっています。夫は、はじめは「革小物作りは趣味」という認識しか持っていなかったようですが、お仕事・収入が増えるにつれて私の仕事を尊重してくれるようになりました。

―ご家族の温かいご協力があるんですね。

 

成功のポイント

―さて、坂本さんの場合、商品を「作ったものを売る」と同時に「作り方を教える」事業も展開されています。販売とお教室、両方を組み合わせることで、良い相乗効果が生まれているそうです。

ここでは、「マーケティングの4P」(「Place(販路)」、「Product(商品)」、「Price(価格)」、「Promotion(販促)」)に沿って、成功のポイントをより具体的にみていきます。
4P

【Place(販路)】

―まずは、販路に関してですが、複数の販路を持つことで安定しやすくなるというメリットがあります。

坂本さんのケースですと、「作ったものを売る」事業に関しては、メールでのオーダー受付や、イベント・工房等での販売。「作り方を教える」事業では、イベントでのワークショップや出張、工房でのお教室等を展開されています。

 

【Product(商品)】

―次に商品に関してですが、お教室で生徒さんと接することで、商品企画に活かされることがあるそうですね。具体的に教えてください。

坂本:私の場合、革の専門スクール等に通ったわけではありませんから、特に最初の頃は足りない知識や至らぬ点がたくさんありました。お教室を開いて実践していくなかで気づくこともたくさんあったんです。
また、生徒さんが季節に合わせてどんな革・デザインを選ぶのかということも、非常に参考になっています。例えば、夏までは黄色やブルーの革が人気ですが、秋物の季節になるとオレンジや茶色の人気が上がります。そういった知見は、作品作りに活かされますね。

 

【Price(価格)】

Price

―3つめの価格という面では、複数の事業を組み合わせることで、収益を安定させる効果がありますね。
坂本さんの場合、主婦にも手が届くお手頃価格で革小物を提供したいという想いをもって販売されています。販売価格は、材料費プラスαとかなり値ごろな金額で設定されています。
お教室の価格は、生徒さんが作りたいものを、完成品の販売価格と同じ値段で教えるという設定になっています。ですので、複数の生徒さんに同時に教えることによって、時間当たりの収益は、お教室の方が高くなりますね。販売とお教室を組み合わせることで、お手頃な価格設定であっても収益を出すことができる、ということですね。

坂本:そうですね。後は、そもそもの原価を抑えるために、良い仕入れ先を見つけることも大切です。安価で販売している革の問屋さんを探す、セール時期にまとめて購入する等の工夫をしています。また、お教室と作品制作用の革を共有することで、無駄が発生しづらくなりますね。

―なるほど、効率的ですね。

 

【Promotion(販促)】

―販促の面でも、相乗効果があるそうですね?

坂本:はい。イベントで作品を販売する際、近くにお教室のチラシを置いておくと、そちらに興味を持っていただけることもあります。また、お教室の生徒さんが持ち歩いている作品を見て、口コミでお教室に来ていただけたり、「作りたくはないけれど欲しい」という方は商品を購入してくださったり、ということもありました。

―革小物のお教室は少し珍しいので、そういった意味でも口コミで広がりやすそうですね。

 

現在のワークスタイル

―次に、坂本さんのワークスタイルを伺っていきましょう。
1か月の大体のスケジュールは次の通りです。お教室が週4日程度、イベントでの販売が月に1~2日程度、集中して作品の制作に充てる日が月に1~2日程度とのこと。その他、ご自身の習い事や、学校行事にも積極的にご参加されていますね。

月


坂本:そうですね。高校の役員になっているので、学校行事のお手伝い等もしています。そこまで負担が大きいものではないのですが、こういったワークスタイルだからこそ積極的に関わることができるのだと思います。

―1日のスケジュールもお伺いしました。9時半~14時頃までがお教室のお時間なんですね。

1日


坂本:そうですね。ただ、現在は工房をオープンしたばかりでバタバタしていますので、こちらは工房オープン前のスケジュールだとお考えください。子どもたちはもう自分のことは自分で出来る年齢なので、場合によっては子どもがいる時間帯に事務処理等の仕事をすることもあります。

 

働く上で大切にしていること

―坂本さんが“働く理由”を教えてください。

坂本:もちろん家計のためでもありますが、“より楽しく暮らすために働きたい”という思いが強いです。働くことそのものが私自身楽しいですし、収入が増えれば家族で旅行する、美味しいものを食べに行くなど、充実した時間を過ごすこともできます。良い循環が出来ているので、有難いですね。

―最後に、働く上で大事にしているポイントをお聞かせください。

坂本:子どもが困っているときに、手を差し伸べられる余力を残しながら働くのが理想的ですね。現在はちょうど多忙なタイミングなのですが、以前は子どもの下校のタイミングで自宅にいるよう心がけていました。多感な時期になると、子どもは自分から悩みを打ち明けてくれないことも増えます。毎日子どもが「ただいま」と帰ってきたときの表情を見ていると、ちょっとした変化に気づくことも多かったです。工房が軌道に乗れば、またそういったライフスタイルにしていきたいと思っています。

―ありがとうございました。

 

坂本さんは、お子さんの成長やお客様の要望に合わせてステップアップし、今やご自身の工房をオープンするまでに事業を拡大されました。子育て中は何かと制限が多いものですが、長期的な視野を持つことも大切ですね。
「うみのあお そらのあお」では、ものづくりに限らず、今後も様々な働き方のヒントをご紹介していきます。ぜひ参考にしてください。